外交・歴史・軍事・用兵・兵站を理解しない首相とブレーン達

「「首相の能力・手腕に疑問」=普天間難航で批判−アーミテージ氏」というニュースについて
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010051400149

★某SNSで好反応を頂いたので、無謀にも転載してみます。

親日派であるアーミテージ氏の酷評を待つまでも無く、ロジスティクスと言う概念を正しく理解していれば、訓練の分離にあたり、如何に多額の経費が必要か理解できると思います。

事実、石原東京都知事もメディアの取材に対して、沖縄基地問題に対する歴史的な経緯を理解せず、自民党が決めた政策だからと、後先を考えずに民衆受けの良い県外・国外移転を語る(大意)・・・
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/100514/lcl1005141907006-n1.htm
として批判しておられます。

アンチ自民党政策は(個人の)心情として理解できる範囲ですが、標記の事情を理解しない責任は、今ごろになって勉強しますと漏らす頼りない首相だけに限らず、首相を支えるブレーンには、優秀な情報分析官が存在せず、また歴史的な経緯や、理論面を支え、時には首相さえ叱咤する有能なブレーンも存在しない事実を示しています。

情けない、一国の首相として、あまりにも情けない。

例えば、1個師団規模の軍隊、約1万5千人が一斉に食事する光景を想像さえできないのか?

日本では何処にでも存在するコンビニは、僅か150人の胃袋を満たす事さえ難しい。
その事実にも関わらず、軍事基地の周りには食欲を満たす、数100件の店は存在しない。

1個師団の移動はどうだろうか?
150人乗れる超大型バスが存在すると仮定して、1000台必要になるし、そもそも、銃や弾薬、水・非常食糧など個人の装備品=ばかでかいリュック、があるから、定員の半分しか乗れないので、単純計算で2000台に膨らむ。
1個師団の軍隊は兵員だけでないので、大砲や重機関銃とその弾薬、対戦車ミサイルや対空ミサイル、でかぶつの戦車数十両と戦車輸送用トレーラ、食糧運搬車、輜重車、指揮車、レーダー車、電源車、燃料輸送車などなどと、後方支援用の補給部隊、輸送船、エトセトラ、エトセトラで、道路は埋め尽くされてしまい、港湾や河川は補給物資で溢れかえり、列車は輸送に徴発される・・・

これが、兵站のごく一部を表した様子です。

故に、食糧や弾薬を含む軍需物資は、沖縄に存在する部隊や基地に都合が良いよう、あらかじめ輸送船などにより、戦略目的地へ計画的に事前集積(緊急時に、輸送する事が難しいせいもあるかも)されています。

輸送を簡略化し、兵站を容易にする=軍事費のコストを下げるためには、基地から遠くない距離に生産設備がある事が理想的です。

また、沖縄は、米国の軍事戦略上、重要とみなす位置に存在するため、他を以って代え難い事実もあります。

日本国近郊には、日本の10倍の国民数を誇る国もあれば、核ミサイルを持つ不安定な政情の国もあり、すぐその近くには経済復興が目覚ましいもう一つの大国もあり、単年度の予算で50兆円もの軍事予算(日本国家予算の半額以上!!!)を投じる底力を持った、米国の軍事プレゼンスは欠かせません

そういった事実と歴史的な経緯を無視し、自民党の政策だったから反対、などと言うのは口先だけの愚か者でしかありません。

その現状だけでも米国にとっては腹立たしいのに、軍事的見地から脆弱な基地や、兵站を無視した訓練の移転を提案したりすれば、米国の拒否は当然でしょう。

子供手当の支払いや、高速道路の無料化さえできない予算状況において、兵站の負担増=軍事予算の大幅な増額=国債による借金の大幅増加など、もっての外だと思います。

更に、兵站にかかる軍事費用の増額さえ許容できない中で、何ら地元と事前調整を行わず、霞が関に居座ったまま、米軍部隊の移転案を安直にメディアへ発表するなど、首相とそのブレーンによる適切な調整を伴った国策立案が、全く機能していない事をも指し示しています。

首相にとってイエスマンのブレーンを遠ざけ、首相にとって耳の痛い事を言い続け、時には口げんかする真っ当なブレーン(=民主党のお嫌いな、いわゆる高級官僚に多いですが)へ総入れ替えするか、首相退陣を選択する以外の選択肢はあり得ないと思います。